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第4巻 幕間

蓑輪研究室・第二部

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皆川は、湊原市での調査結果をまとめた報告書を持って、蓑輪の個室に入った。

津久見の「翻訳と定着支援」。

来島の「枠の設計と継続的な観察」。

浜田、田所、宮地の言葉。

それらを整理した報告書の最後に、皆川はこう書いていた。

「良い仕組みは、そのまま複製されるのではなく、地域の条件に合わせて翻訳され、修正されながら伝播する」

蓑輪は、いつものように、最後まで読んでから口を開いた。

「面白いですね」

蓑輪は、共同記述のフィールドノートを指した。

「今回は、皆川さんと田丸さんが、一緒に一つのノートを書いたんですね」

「はい。今回だけは、そうしました」

「二人の観察が、別々の対象を見ながら、同じ論点に近づいた」

「そうだと思います」

蓑輪は、報告書の最後の一文に視線を移した。

「良い結論ですね。きれいにまとまっています」

皆川は、その評価を素直に喜べなかった。

「……はい。でも、きれいにまとまりすぎている気がします」

「どういう意味でしょう」

皆川は、少しためらってから答えた。

「前の仕事で、私が納品した報告書も、きれいにまとまっていました。分かりやすい結論を書いて、評価もされました。でも、実際には数年後に使われなくなっていた」

蓑輪は、否定も慰めもしなかった。

「だから、ご自身が書いた『きれいな結論』を、簡単には信じられない」

「はい」

「今回の結論も、湊原市という一つの事例を、整いすぎた言葉にしているかもしれないと」

「そうです」

蓑輪は、報告書を皆川の前へ静かに押し戻した。

「納得できないなら、まだ結論にしない方がいいでしょう」

「はい」

「きれいな結論ほど、別の現場に当てて、崩れるかどうかを確かめた方がいい」

皆川は、その言葉を素直に受け止めた。

次に何を見るべきかは、まだ決まっていない。

ただ、今の結論のまま研究を終えてはいけない。

そのことだけは、はっきりしていた。

この話のFM豆知識

(豆知識は準備中)

つづく

※本作はフィクションです。登場する人物・団体・自治体等はすべて架空であり、実在するものとは関係ありません。作中の制度・法令に関する記述は一般的な説明であり、最新情報は関係省庁にご確認ください。詳しい注記はこちら