ep407

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第4巻 第7話

湊原市へ

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(青葉市編ではフィールドノートを番号順に綴った。ここから先は、比較調査で訪れる自治体ごとに、地名でノートを綴っていく。「田丸担当」とあるものは、田丸が単独で聞き取り、後から皆川と共有した記録である)

湊原市役所は、青葉市役所からローカル線を乗り継いで、二時間近くかかった。駅前から見える庁舎は、青葉市のものよりずっと小さく、古かった。

「青葉市役所より、ずっと小さいですね。職員さん、すれ違う人、なんか年齢層も高めな気が」

田丸が、改札を出たところで、さっそく観察を始めた。皆川も、その印象には頷くしかなかった。

「人口、確か青葉市の十分の一程度だったよね」

「ですよね。これ、正直、青葉市を参考にできる規模じゃないんじゃないかって、ちょっと思っちゃいます」

皆川も田丸と同じ気持ちを抱えていた。これまで見てきた青葉市の仕組みが、この規模の役所で、同じ形のまま機能するとは思えなかった。

「規模が違うってことは、真似をした、っていうより、何か別の形に変えたってことなのかもしれない」

皆川の独り言にも似た言葉に、田丸が何かをノートに書き込んでいた。

「変えた、かあ。コピーじゃなくて、ってことですよね」

皆川は、先ほどの言葉に、深い意味を込めたわけではなかった。

庁舎の受付で、梶原との面談を申し込む。窓口の職員は、皆川たちの研究の説明を聞くと、特に驚いた様子もなく、奥へ案内した。

「梶原は、もうすぐ来ますので」

待合のベンチに座りながら、田丸が小声で聞いてきた。

「先輩、ここ、本当に青葉市から何か伝わったんですかね。規模、全然違いますし」

「分からない。だから、来たんじゃない」

皆川は、それだけ答えた。「参考にできる規模じゃない」という先入観を、まだ捨てきれていなかった。

フィールドノート(湊原市・到着)

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青葉市との規模差は想定以上。庁舎・職員数ともに大きく異なる。「参考にできる規模ではない」という前提を、いったん持ったまま調査を始める。

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この前提が、本当に最後まで正しいかどうかは、まだ分からない。

フィールドノートを閉じると、田丸が隣で同じ夕景を見ていた。

「先輩、疲れた顔してます」

「そう見える?」

「見えます。でも、前に進もうとする顔です。私は、そういうところを尊敬しています」

この話のFM豆知識

FMの教訓:人口の違いだけで判断せず、施設数、人員、予算を比べ、取り入れられる作業を探す。

◆ 仕事を続けるために使える人員と費用を比べる

人口が違う自治体では、施設数、担当職員数、使える予算も異なります。同じ様式を使っていても、入力や確認に使える時間は同じとは限りません。先行事例を調べるときは、誰が、どのくらいの時間を使って、どの作業をしているかも聞きます。

◆ 同じ目的を、別の手順で実現できるか考える

例えば、先行自治体が専用システムを使っていても、自分の自治体では共通の表で必要な項目を管理できるかを検討します。入力の負担を減らす場合も、判断に必要な情報や確認する人を省いてよいかは別に確かめます。規模の違いは、手順を変える箇所を探す材料になります。

◆ 物語の場面

皆川と田丸は、青葉市と湊原市の規模の違いに戸惑います。しかし、その違いがあるからこそ、同じ手順を写したのではなく、何かを変えて使ったのかもしれないと考えます。二人は、梶原から具体的な進め方を聞こうとします。

■ 担当者が行うこと

先行自治体と自分の自治体について、施設数、担当者数、予算、決裁する人、データの保存方法を並べて比べてください。取り入れる作業と簡単にする作業を決め、小さな範囲で試します。省いた項目で確認できなくなることがないかを調べ、問題があれば手順を直します。
つづく

※本作はフィクションです。登場する人物・団体・自治体等はすべて架空であり、実在するものとは関係ありません。作中の制度・法令に関する記述は一般的な説明であり、最新情報は関係省庁にご確認ください。詳しい注記はこちら