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第4巻 幕間

白井の訪問

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ゼミ室で、皆川が報告書を見直していると、扉が開いた。

「皆川、いる?」

ゼミのOG、白井美咲だった。

三十二歳。出張帰りらしく、スーツ姿でキャリーバッグを引いている。軽く癖のある巻き髪は、大学にいた頃と変わっていなかった。

「白井先輩。今日はどうしたんですか」

「近くまで来たから、寄ってみた。これ、見てもいい?」

白井は形式だけ許可を求めると、皆川の返事を待たず、机の上の報告書を手に取った。

一通り読み終えると、顔を上げた。

「面白そうなことをしてるね」

皆川は、素直に嬉しかった。

だが、白井はすぐに続けた。

「でも、うまくいった話ばかりでは、研究にならないんじゃない?」

皆川は、すぐに答えられなかった。

先ほどまで感じていた喜びが、急速に薄れていく。

「……まだ調査の途中です」

「行き詰まってるみたいだね、その様子だと」

白井は、少し言いすぎたと思ったのか、申し訳なさそうな顔をした。

それから、気分を変えるような調子で続けた。

「一度、うちに来てみたら?」

「白井先輩の職場ですか」

「たぶん、皆川がこれまで見てきたものとは、少し違うものが見られると思う」

「渚町役場でしたよね」

「いろいろあって、今は早瀬市役所」

皆川は、少し考えた。

青葉市では、仕組みが回り続けていた。

湊原市では、それが翻訳され、地域に合わせて作り直されていた。

では、それが根付かなかった場所では、何が起きたのか。

「分かりました。伺います」

白井が帰った後も、報告書の「結論」の欄は空欄のままだった。

皆川は、その空欄を埋めなかった。

今は、埋めないことの方が正しいと思えた。

この話のFM豆知識

(豆知識は準備中)

つづく

※本作はフィクションです。登場する人物・団体・自治体等はすべて架空であり、実在するものとは関係ありません。作中の制度・法令に関する記述は一般的な説明であり、最新情報は関係省庁にご確認ください。詳しい注記はこちら