事業計画作成に当たって
国、地方自治体等の公共建築は、延べ面積が約7億㎡で、そのうち地方自治体は約5億4千万㎡を所有し、その約半数が完成から30年を超え、大規模修繕等の必要性が増大している。また厳しい財政状況、人口減少、少子高齢化、市町村合併、建築基準法・省エネ法改正等により、公共建築は、長寿命化、耐震化、省エネ化、資産のスリム化、設計図書の15年保存、安全・安心等の性能の維持向上を図ることと、より有効な活用とが求められている。
地方自治体の公共建築の1年間の保全費は、3兆3千億円(修繕費1兆3千億円、維持管理費1兆1千億円、光熱水費9千億円)と推計される。またこれらの費用は、地方自治体間、施設間での相違が大きい。これは、維持管理費、光熱水費のベンチマーキングがなかったことが原因と考えられる。また公共建築の量的の余剰、建物用途のミスマッチも大きな課題である。
さらに平成23年東北地方太平洋沖地震による計画停電への対応のため、公共建築等の使用電力量を削減する技術が緊急に必要である。これらを踏まえ、平成23年度の事業計画の目標および重点事業は、
(1)保全費用を抑制しつつ、基本的な建物性能の維持向上、長寿命化、温暖化ガス排出抑制、光熱水量の抑制等を図るための保全およびストックの有効活用に関する調査研究・技術開発を推進する。
(重点事業)
1.保全とストックの有効活用に関する総合的な調査研究
2.次世代BIMMSの検討
(2)保全およびストックの有効活用の意義、技術を広く普及させるため、データ整備、評価・格付け等の見える化技術の普及、情報発信、相談・支援、講習会を実施する。
(重点事業)
3.評価・格付け、情報発信、相談・支援、講習会の実施
(3)保全およびストックの有効活用のニーズとシーズの把握並びに関する調査研究・技術開発を積極的に行う。
(重点事業)
4.次世代公共建築研究会、BIM等の自主的調査研究の実施
1.官公庁施設等の保全に関する総合的な調査研究及び技術開発
(2) 基本的な性能の確保に関して
- 点検、調査、診断手法の体系化
(3) 保全費用の適正化、抑制に関して
- 維持管理費用のベンチマーキング、改善手法の検討
- 点検費用等も含めたライフサイクルコストの検討
(4) 環境性能に関して
- 光熱水量・費用のベンチマーキング、改善手法の検討
(5) 計画的な保全その他に関して
- 施設マネジメント技術体系の再構築の検討
2.官公庁施設等のストックの有効活用等に関する調査研究及び技術開発
(1) 基本的な問題把握に関して
- 自治体ストック調査(2011)の実施
(2) 量的側面、質的側面に関して
- 職員および人口一人当たり公共建築面積の把握
(3) システム、手法、情報化、その他に関して
- ストック活用度の指標化の検討
- リノベーション・コンバーション、超グリーン建築、公共建築と地域連携、IFC/BIM(次世代公共建築研究会第2フェーズ)
3.官公庁施設等の保全に関する情報の収集、蓄積及び提供
(1) BIMMS-N、BIMMSの運用・改良、結果の分析
(2) 次世代BIMMSの検討
4.建築物等の保全等に関する図書の出版及び研究成果の普及促進
(1) 出版、改訂を行う出版物
- 公共建築物の調査・点検ガイドライン、新たな視点からの公共建築ストックマネジメント、建築保全六法、建築保全手帳
(2) ホームページ、機関誌、メルマガ
- 機関誌Re
- 保全技術研究所報、自治体ストック調査(ホームページ等)
- 公共建築のFMと保全ネットワークニュース(メルマガ)
5.建築物等の保全等の研修、講習会、講演会等の開催、相談・支援
(1) 研修、講習会、講演会等
- 建築仕上げリフォーム技術研修、建築物維持・保全研修、公共建築物の調査・点検ガイドライン
- 公共建築月間記念講演会、保全技術研究会、自治体等FM連絡会議、次世代公共建築研究会講演会
(2) 相談・支援
- 保全とFMに関する相談・支援、自治体等FM連絡会議支援、保全とFMに関する研修・講演等への講師派遣
6.民間開発の建築物等の保全技術の技術審査・証明
民間における建築物等の保全技術の研究開発の促進と新技術の適正かつ迅速な導入を推進するため「建築物等の保全技術審査証明事業」を実施。
7.官公庁施設等の保全および耐震性能に関する評価
(1) 公共建築物の耐震改修計画の技術評定の実施
(2) 公共建築の安全・安心、環境、経済性の視点からの保全評価
8.官公庁施設等の施設マネジメント支援
官公庁施設等の施設マネジメント業務を限定的に実施し、保全業務仕様書への反映、光熱水量・温暖化ガス排出削減等の技術の向上を図る。
9.その他本センターの目的を達成するために必要な事業
- 海外政府組織等と公共建築の管理、運用に関する情報交流